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トップMapAngel Down 少女たちの過去編>『師と弟子』

前回→AD少女たちの過去編 『ハンター協会』

注意事項

1、これは東方projectの二次創作小説である

2、オリキャラが登場するのである

3、原作設定一部崩壊、キャラ設定一部崩壊しているのである

4、これらの要素のひとつでも嫌なのであるなら、すぐに戦略的撤退をするのである

5、以上のことが大丈夫ならば、スクロールで読んでいってくれ


ハンター協会は、主に三つの役割に分かれている。
一つ目は、吸血鬼の管理。
街中にある監視カメラや、現地の人の声、その他偵察などをして吸血鬼たちの巣を探す監視班。
二つ目は、吸血鬼の退治。
いわゆるヴァンパイア・ハンターと呼ばれる部類の仕事である。
監視班が調査して手に入れた吸血鬼たちの情報を元に、巣を襲撃し殲滅させる。
それが、オレたちの役割であり、使命だ。
そして三つ目が、吸血鬼を対象とした人体実験。
吸血鬼の体は、未だ謎に包まれている部分が多い。
それを究明し今後の対策に生かすのが、この班での仕事だ。
正直に言うなら、オレは実験班は嫌いだった。
なんというか、人間をモルモットとしか見ていない、そんな気がするのだ。
吸血鬼は中身はアレだが見た目は人間だ。
そんな輩に、おぞましい人体実験などオレには到底できない。
だが彼らは、なんとも思わずに拷問のような実験を繰り返してきたのだ。
こんな事オレが言うのは間違っている、それは理解している。
だが言わせてほしい。あいつ等は、もう人間じゃないって。

そんな彼らが住まう第三棟の二階にあるのが、ここ作戦会議室だ。
本来は強襲作戦や殲滅作戦などの会議に使われる場所なのだが、
オレが上層部に話を持ちかけて極秘に使用させてもらっている。
その目的は、ある人物とコンタクトを取ることだ。
その人物の名は――。

「ふぅ……」

パイプ椅子に腰掛け、煙草を吹かす。
吸い込むと、苦々しい味が血管を通して全身へと廻っていった。
それを感じ取ると、すぅと息を吐く。
何かが抜け出したかのように白く染まるその吐息を見ていると、ふと感慨に耽ってしまいそうになる。
これから会う人物、シンとの思い出に。

彼は言ってみれば、いい加減な人間(ひと)だった。
稽古らしいことはあまりつけてもらえず、肉体トレーニングの毎日だった。
オレが身に付けている殺しの術だって、彼に教わったものではなく、独学で覚えたものだ。
それも吸血鬼たちの住処を襲撃するという、死と隣り合わせの中で。
だが、そんな彼からも学んだものはある。
それは、吸血鬼(とも)を殺しても壊れない精神(こころ)だった。
ヴァンパイア・ハンターがよく陥る症状のひとつとして、疑心暗鬼がある。
吸血鬼の見た目は普通の人間と何一つ変わらない。強いて言えば、犬歯が牙のように尖っていることくらいである。
そんな奴等だから、自分の身近な人が彼らに襲われて吸血鬼にすりかわっていても誰も気づくことはできない。
前に言ったが、現在ヴァンパイア・ハンターとなっている奴等の目的は、大抵その高額な賃金だ。
イラクやらで戦争ごっこ演じている傭兵たちの賃金より断然高い賃金は、一部の傭兵たちからも人気の的だった。
その高額の賃金に釣られて入る輩もそう珍しくはない。
故に経験するのだ、幾つもの死線を共に越えてきた仲間がいつの間にか吸血鬼にすりかわっていたという現実に。
吸血鬼は、牙による血液注入で簡単に仲間を増やすことができる。それが彼らの強みだ。
仲間裏でこっそりと増やされていても誰も気づくことができない。
そして気づいた時には、自分の周りにはもはや吸血鬼しかいない、そういう奴を何人も見てきた。
今まで仲間だと思っていた奴に銃を向けるのは、どんな死地を乗り越えてきた傭兵にだって初めての奴が殆どだろう。
そして銃を撃ってしまった時に気づくのだ、もしかしたらあいつも吸血鬼なのかもしれない、と。
それからはもはや無限ループだ。疑わしい奴は全て排除する。それこそ吸血鬼(やつら)の思う壺となるのだ。
そういった奴等が辿る末路といえば、大抵は上位のハンターに粛清として処刑される。
現にオレも、そういったハンターを何人も殺してきた。
だからこそ思う。闘うという意思よりも、仲間を殺すかもしれないという覚悟が必要だっていうことを。
それを教えてくれたのがシンだ。
色々といい加減な人だったが、今では感謝くらいはしてる。
もしあの人と出会わなかったら、オレは糞溜めの中でとうの昔に死んでいただろう。

ギィィィィッと重苦しい金属音が耳に刺さる。
清掃の行き届いていない薄汚れた暗い部屋に姿を現したのは、白髪の男性であった。
綺麗に整えられた白髪に、野獣のような目つき。
黒のコートを身に纏い、その中に着る緑色の軍服を着こなす姿は高位の人間だと思わせる形振りだった。
そして一番の特徴と言えば、左目を覆っている眼帯である。
白の髪に、黒の眼帯。そのコントラストが、彼を見た者に様々な印象を植え付ける。
ある者は、悲愴。そしてある者は、同情の意。そしてある者は、尊敬。
だが総じて全ての人間がこう思うことになるだろう。

――あの人は、恐ろしい。

その鉄仮面のような無表情の奥に秘められた獣のような殺意を感じ取ったら最後、彼に対して抱く感情はひとつしか残らないだろう。

――畏怖、ただそれだけ。

敵はおろか、仲間にすら畏怖され讃えられる孤高の英雄、それが『白狼の鬼神』と呼ばれている彼の姿なのである。

「よぅ、久しぶりじゃねえか。愛弟子よ」

奈落の奥底から響くような低音の声が聞こえる。
口に咥えていた煙草を強引に揉み消すと、八年振りに会う彼に至極爽やかな声で応対した。

「よぅ、久しぶりじゃねえかよ、お師匠さんよ」








「まぁそんなわけで、彼女がハンターに志願しているのだが……」

彼と会ったオレは、自分が今抱えている問題について掻い摘んで話すことにした。
殲滅作戦の夜に鬼崎汐里という名の少女と出会い、そして今彼女がヴァンパイア・ハンターに志願しているというところまで。
こういう経験は前例が無いため、経験豊富な彼に相談しに行ったというのが現状である。
どうしてこうなったのかを自分でも理解していないので駄目なのだが。

「あぁん、なんだそれは? 一体どういうシチュになればそんなエロゲ的な展開になるんだよお前」

どうやら、相談する相手を間違えたようだ。
これ以上自分の得になることは何も出そうになかったので、腰を上げて立ち去ろうとすると――。

「おい、待てよ。どうして諦めるんだよ? まだこんな爺さんからでも何か得られることがあるかもしれねぇじゃねえかよ」

ガシッと肩を掴まれる。
その豪腕から滲み出る腕力は、下手すりゃ肩が砕けてしまうくらいのものである。
オレとしても、こんなところで肩を失うのは何としても避けたいので、仕方なく目の前の老いぼれ爺さんの話に付き合ってやるとする。

「はぁ……。で、オレは一体どうすればいいんだ? 彼女の望みどおりハンターにするのか、それとも拒否して彼女を元の世界に帰すのか」

そんなオレの問いに、深々と溜息を吐くシン。
何故だろうか、無性に彼を殴りたくなってきた。無論、拳で。

「あのなぁ……。いいか? 彼女はな、お前に好意を抱いているんだ」

「は?」

不意に素っ頓狂な声が出る。
それもそのはず、今こいつ何て言った?
好意? そんな馬鹿な。
一体どこに彼女がオレに好意を抱くシーンがあるというんだ。
百歩譲って仮に抱いたとしよう。ならば、こんなシーンで好感を抱く女性もどうかと思うぞ、オレは!

「やっぱり気づいていなかったのか。だからお前は駄目なんだ」

そんなオレをまるで可哀想な子を見るような目で視線を送るシン。
もうオレは頑張ったよ。だからもういいよな、こいつを殴っても。無論、拳で。

「分からないというのなら、一旦状況を整理しよう。まず、何で彼女は再びお前の元に訪れた?」

そんなことオレが知りたいわ。
そう、彼に視線を送ると――。

「簡単さ。彼女はお前に好意を抱いているからだ」

だからどうしてそういう結論に達するのだ。
こいつの脳の構造を見てみたいわ。

「まず初めに、彼女は吸血鬼どもに襲われた後にお前と出会った。そこまではいいな?」

「ああ」

「そして吸血鬼を殺すお前を見て、ハンターだと確信して話を持ちかけた。そこまでもいいよな?」

「ん、ああ。で?」

「そしてお前がハンターだと理解し、お前に自分の過去を打ち明けた。ここまででなんか問題があるか?」

「ねぇな、全くと言っていいほど」

オレがそう答えると、シンは短く溜息を吐いた。
そして、右手で拳を作り……。

「この、馬鹿弟子がァァァッッッ!」

思いっきりオレを殴りやがった。

「な、何すんだよクソジジィ!?」」

「なんで気づかないんだよ、馬鹿野郎。どうみてもフラグ立ってるだろうがっ!」

「なんだよフラグって!? こっちは訳の分からないまま殴られたんだぞ。おかしいのはてめぇの頭だろうが」

「はぁ、まだ気づかないのか馬鹿弟子が。俺をお前をそんな風に育てた覚えはないぞ」

「当たり前だ、お前に育ててもらった覚えがねぇからな」

そう言うと、殴られた傷を触る。
手探りで触った感じから判断すると、そう大きな傷ではないらしい。
ヒリヒリと鋭い痛みはあるが、歯茎が折れたような感覚はないので放っておいても大丈夫だろう。

「んで、どこにそのフラグとかいうのが立ってるんだ、オレには全然理解できないのだが。というか、理解したくもねぇな」

「分からないなら理解できるまで言ってやる。彼女はお前に自分の過去を打ち明けたんだよな?」

「ああ、打ち明けたな」

「そこだ! 何故気づかないんだ、そうそう初対面の男性に出会ったからって、普通自分の過去を晒すはずがなかろう。それも自分は売女ときた」

「そんな奴が、そう易々とお前みたいな異常な男に教えると思っているのか?」

ああ、そうか。
ここまで言われてやっと気づいた。
なんか罵られている感もあるが、そこはまあいい。
確かに彼の言うとおり、彼女は初対面であるはずのオレに過去を打ち明けた。
普通に考えてみればおかしいと何故気づかなかったのだろうか。
そう考えると、今までグチャグチャだったパズルのピースがぴったり揃った気がする。
たったひとつ結論が出るだけで、何故彼女が再びオレの前に現れたのか、その理由もどことなくだが読めてきた。

「つまり、なんだ……その。オレに……惚れた、とか?」

「そこまでは言ってはいない。自惚れるな、馬鹿弟子」

「うっ、うるせえっ! 初めての経験なんだから仕方ねぇだろっ! 勘違いくらいしたってよ……」

頬が熱くなる。
別に照れているつもりはないのだが、何故か紅潮してしまう。
どちらかというと、恥ずかしいという感情なのかもしれない。

「で、結局オレはどうすればいいんだよ」

「そうだな……」

オレの問いにシンは俯く。
そして何かひとつの結論に辿り着いたかのような顔をしてオレを見つめる。

「簡単じゃないか、ものすごく簡単なこと」

「なんだよ、シン」

「お前の気持ち、ただそれだけだろ? お前はあの子をどうしたいんだよ?」

確かにそうだ。
仮に彼女がオレに好意を抱いているとしたら、彼女がハンターになるか否かはオレの手に左右されていると言っても過言ではない。
彼女がオレに好意を抱いておらず、ただ純粋にハンターになりたかったとしても、その運命はオレの手に左右されているのだ。
ならば、オレのすることはただひとつ。

「決めたぜ、シン。汐里をどうするかがな」

オレは自分の想いを胸に、彼女の待つ部屋へと歩き始めた。


           To be continued...


次回→AD少女たちの過去編 『狩人の決意、少女の覚悟』
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