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トップMapAngel Down 少女たちの過去編>『切り裂きジャック』

前回→AD少女たちの過去編 『異世界へ誘う者』

注意事項

1、これは東方projectの二次創作小説である

2、オリキャラが登場するのである

3、原作設定一部崩壊、キャラ設定一部崩壊しているのである

4、これらの要素のひとつでも嫌なのであるなら、すぐに戦略的撤退をするのである

5、以上のことが大丈夫ならば、スクロールで読んでいってくれ









私がハンター協会に登録されて数日したある日。
いつものようにゼロもとい兄さんと修行をしていた時であった。

「今日はこれで終わりにする?」

「ああ、そうだな。良い練習になった。ありがとな、汐里」

兄さんがいつものように私の頭を撫でてくれる。
撫でられると、くすぐったくて、温かくて、先ほどまでの疲れが一気に彼方まで飛んでいくようだった。

不意に頭から手が遠のく。

「あ、そうだ。東方やんねぇと」

彼はいそいそと、パソコンの前に座り、キーボードを叩き始めた。

「はぁぁ……」

思いっきり溜息を吐いて、その場にへたれこんだ。




兄さんがパソコンを買ったのは半年くらい前になる。
兄さんは基本的にいつも私のために稼いだお金を使っていた。
デート代も、誕生日プレゼント代も、生活費さえも彼のお金から出てきているのだ。
だから彼が自分のためにお金を使ったのはこれが初めてになる。
しかも、パソコンという高い買い物までして。

兄さんがパソコンを買ってまでやっていたものは、ゲームだった。
それも、女の子が沢山出ているようなゲームだった。

最初は兄さんも男だから、という発想でなんとか受け入れていた。
だから、あまり見ないようにパソコンの画面から視線を逸らしながら、一緒に生活してきた。
だが生活する上で、必ず眼を背けるのは中々できるものではない。
私も一応女の子だ。兄の趣味が気になるのも至極当然といえよう。

兄さんは、どんな女の子が好きなのか。
年下好きなのか、年上好きなのか。
コスプレとかしている女の子が好みなのか。

歳相応の悩みを持てる自分が、なんか嬉しかった。
だが兄さんは、私の期待をことごとく裏切ってくれたのだった。

兄さんがやっているゲームは、私の想像するえっちなゲームじゃなくて、何か別のゲームをやっていたのだ。
説明しにくいが、簡単にいうと、一昔流行っていたような感じのシューティングゲームだった。
確かに女の子は出てくるのだ。
でも、歳頃の健全な男の子のやるゲームとはちょっと違う気がするのだ。

私たちはハンターとして特訓を受けてきているのだから、普通の人とはスペック自体がかなり違うのだ。
動体視力も当然のように鍛えており、目の前に飛んでくる弾丸は躱せないにしても、ナイフくらいなら条件反射で避けることはできる。
だから傍から見ても、兄のやっているゲームは簡単のように思える。
勿論、初見で全ステージクリアなんていうことはできるはずもない。
ただ、少しやりこめば出来るというレベルなのだ。
だから、何故兄がこんなゲームをやって、それもステージクリアごとに歓喜しているのかが理解できなかったのだ。

「よっしゃっ! フラン出てきたぜっ!」

ヘッドフォンを付けながら、兄さんはそう叫ぶ。
傍から見たらただの変態だから、いい加減やめてほしい。

私はそんな兄さんの様子を横目で見ながら、自身の愛銃であるベレッタM92FSの点検をしていた。
デザートイーグルを使う兄もそうなのだが、銃使いである私たちは毎日のように銃の点検をしないといけないのだ。
私たちハンターは、常に吸血鬼たちに狙われている。
それも兄のような有名人は、比較的早く命を落としやすい。
だから私たちハンターは基本的には単独行動は許されていない。
仕事においても、プライベートにおいても、奴らは待ってはくれないのだから。
奴らは太陽の光に対して耐性を持っているので、昼間だって襲い掛かってくる。
だが、昼間は基本的に人が多い上、いくら耐性があるといっても所詮は吸血鬼、やはり体力の消耗が大きいらしい。
だから、昼間に好き好んで襲い掛かってくるようなバカはあまり見かけない。
昼間に暴れると、餌である人間が逃げてしまうという理由もあるしね。

銃の点検を終えると、携帯のスケジュール帳を見る。

――本日二十二時より仕事の依頼。

確認を終えると、私はゲームに夢中になっている彼に言った。

「ねぇ兄さん、私、今日仕事があるんだけど」

「ん、ああ。目標は誰だ?」

「多分、簡単な区画掃討じゃないかな?」

「そうか、じゃあお前一人で行ってこいよ」

単独行動はしないというのが、暗黙の了解となっているのだがうちは違う。
兄と私のスケジュールが異なっているので、基本的に一緒に仕事はしない。
例えば、今日は私の仕事の日なのだが、実は今日の朝方に兄の仕事があったのだ。
私みたいな新参者に与えられる仕事はたかが知れてる。
だが、兄みたいな英雄にとっては、それ相応の危険を伴った仕事を行うのだ。
例えば、Angel Down(エンジェルダウン)の売人たちの捕獲。
売人の周りには、Angel Downを使用し、スペックを高めた吸血鬼たちがごろごろいる。
そんな危険なところにたった一人で乗り込むのだ。
普通のハンター、いや、何年かハンターやっていた者でさえ、死体となって帰ってくるのがオチの仕事。
それを兄は何事もなかったかのようにやり遂げてしまうのだ。
だから兄は英雄と呼ばれるし、私たちみたいに単独行動が許されてしまうのもそれが理由だった。

「兄さん、私がいない間、変なゲームやらないでよ」

「変なゲームってなんだよ」

「……えっちなゲーム」

「やるか、んなもん!」

「じゃあやってたら何してくれる?」

「そうだな……1日お前の奴隷になるのはどうだ?」

「いいよ」

「いいのかよっ! もっと突っ込むところがあるだろっ!?」

そんな些細な日常の他愛のない会話。
私は兄とこんな他愛のない会話ができることを、心から喜んでいたのだ。

「じゃあね、兄さん。今の言葉、覚えておいてよ!」

「マジかよ……へいへい。留守番は任せとけ」

これが私の見た兄の最後の姿だった。
私が仕事を終え、家に帰宅した時には、すでに兄の姿はなかった。
家は荒らされた様子もないし、電気も点けっぱない。
さらに言うなら、パソコンも点けっぱなし。
ついさっきまで居たかのような光景が残っていた。

そして朝が明けるまで彼の姿を探した。
吸血鬼の住処を襲撃し、彼らに居場所を吐かせたりした。
だが見つからない。誰も彼の行方をしらない。

私は天に上がっていく太陽の姿を見ながら、無意識のうちに呟いていた。

「兄さんの……嘘つき」








兄さんが消えたあの日、私は決意したのだ。
いつか兄さんが帰ってきたとき、バカにされないくらいに一人前になって出迎えてあげるのだと。
だから私はただ無心のままに吸血鬼を狩った。
銀の弾丸をその胸倉に撃ちこみ続けた。

そして私はハンターとしてここにいる。
私の顔はすでに吸血鬼たちの間で広まっており、『金色の死神』なんていう二つ名で呼ばれているほどだ。

今にも雨が降り注ぎそうな曇天の中、私はここに立っていた。
二丁のベレッタを両手に握り、ただ空を眺めている。
兄が消えてから一ヶ月が経過した。
有名人だった兄だ。普通ならもうすでに死んでいてもおかしくはないだろう。
だけど私は諦めない。
皆が死んだと認識しても、私だけは生きていると認識しよう。
だから、兄さん。早く帰ってきてほしい。貴方の帰りを待つ女の子がここにいるから。

「こんなところにいたのか、汐里」

不意に背後から誰かが話しかけてくる。

「何か用? シン」

背後には軍服を着た巨漢の男が一人。
名はシン。
かつて英雄と呼ばれ、つい最近前線復帰した男である。
同時に兄の師匠であったと聞いている。

「いい加減、あいつのことで引きずるのはやめろ。お前にはまだ将来がある。
 昔の男より、未来の男を捜したほうがいいんじゃないか?」

「ごめん。私、彼以外の男には心を許せないから」

「そうだったな。悪い、年寄りの戯言だ。聞き流してくれ」

「いいよ、別に」

「だが……」

彼が少し考え、こう言った。

「『切り裂きジャック』に手を出そうなんて考える愚か者はもういないのかもしれないな」

『切り裂きジャック』。
英雄であった兄に畏怖し、皆がそう呼んでいた。
五百人近い吸血鬼を殺してきた兄。
その名誉は、これからずっと語り継がれるだろう。

「そうだね、あの人はナイフだけでも生きていけるような人。だから生きてるよ、絶対」

そう言い、再び曇天の空を見つめる。

今日は渋谷区の吸血鬼たちの掃討が仕事だ。
兄の姿を探しに、私は再び戦場に足を踏み入れる。
例えどんな形であり、兄に会えればそれでよかった。

このときは、兄はまだこの世界のどこかにいると信じていた。
だが現実は違った。兄はすでにこの世界の住人ではなかったのだった。


              To be continued...

次回→AD少女たちの過去編 『幻想に消えた狩人』

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