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トップMapAngel Down 狂乱する少女編>『主人と従者』

前回→AD狂乱する少女編 第3話『崩壊の序曲』

注意事項

1、これは東方projectの二次創作小説である

2、オリキャラが登場するのである

3、原作設定一部崩壊、キャラ設定一部崩壊しているのである

4、これらの要素のひとつでも嫌なのであるなら、すぐに戦略的撤退をするのである

5、以上のことが大丈夫ならば、スクロールで読んでいってくれ











紅魔館のとある一室にて、レミリアは自身の部屋で咲夜が入れてくれた紅茶を飲んでいた。
だが、その咲夜はすでにここにはいなかった。

咲夜は今、主であるレミリアを守るために死地へと赴いていた。
ここ、紅魔館1階にあるパーティールームで。

突如下の階から爆音が響いた。
まるで、神の怒りを象徴するかのように。

「始まったわね……」

彼女はそう呟いた。
彼女の言うとおり、始まったのだ。闘いが。

幻想卿を賭けた戦争(パーティ)が……。










その頃十六夜咲夜とパチュリー・ノーレッジは、侵入者と対面していた。
いや、侵入者というのはこの場合相応しくないかもしれない。
正確には客人だ。主であるレミリア・スカーレットの客人。
だからこそ、丁重にもてなす必要がある。

「お客様、今日はどういったご用件でしょうか?」

いつもどおりの営業笑顔(スマイル)で、客人を見る。
客人は美しい銀髪を靡(なび)かせ、白く漉き取った肌に、炎のように紅い瞳。
そしてゴシック調の黒いワンピースを着ている。
そして一番目を引くのが、背中に生えている巨大な羽である。
羽にしては巨大すぎる、故に翼と言い換えてもいいだろう。

「そうね……」

彼女は腕を組みながら、床を見つめる。
そういうちょっとした仕草なのだが、不覚にも可愛らしいと思ってしまった。
これから殺しあう敵だというのに。

「それじゃあ、まずはこのお屋敷を貰い受けましょうか」

その言葉を合図に、死闘(おもてなし)が始まった。

まず動いたのは客人。
私に向かって走り出した。

――予想以上に速いッ!

彼女の予想外の身体能力に驚きながら、銀のナイフを数本彼女に投げつける。
銀のナイフは対吸血鬼としては優秀な武器だった。
元々は紅魔館に住む吸血鬼を始末するために使うはずだった武器のひとつ。
それが今、紅魔館に住む吸血鬼を守るために使われているのだ。

「援護するわっ!」

隣にいたパチュリー様が、じりじりと後退しながらスペルカードを構える。

――火符

「――アグニレイディアンス――」

パチュリー様の周囲に炎を纏った弾幕が形成される。
周囲に展開され、侵入者を迎え撃つ。
無数の炎弾が飛ぶ中、侵入者は無言のままだった。
そして自身の顔面に飛んできた弾を素手で容赦なく叩き落してしまった。

「……これは、確かに化け物ですね」

化け物だ。
パチュリー様の本気の弾幕を腕一本で容易く払いのけてしまい、さらに無傷。
異常なまでの身体能力。
そして彼女から発せられる異常なまでの殺気。
勝算など万に一つ無いのかもしれない。
だがここで退くわけにも、諦めるわけにもいかなかった。

何故なら、紅魔館のメイド長だから。
何故なら、紅魔館の主、レミリア・スカーレットの従者だから。
何故なら、ここにはまだ思い出という名の未練が残っているから。

――死ぬ気でいかなければならない。

そう自分に言い聞かせ、現状を把握することに努めた。

客人は20m奥の廊下。パチュリー様の放つ炎弾にもろともせず、こちらに向かって歩いてくる。
この調子だと、後10秒もあればこちらまで来てしまうだろう。

パチュリー様は私の後方10m圏内。
炎弾をばら撒きながら、客人の動きを抑えているが、効果は全くと言っていいほどない。

私はその二人のちょうど真ん中にいる。
つまり、接近して白兵戦に持ち込むのもよし。
また後退して、距離を保ちつつ持久戦に持ち込むのもよし。

ただ、どちらの選択肢を選んだところで、勝つ見込みなどまるでなかった。

今更ながら、お嬢様が仰った運命について思い出していた。












「もうすぐ、この館に客人が来るわ」

「客人……ですか」

「客人の名は、イリス・スカーレット。地下の牢獄に封印された私の姉よ」

「ッ!?」

目の前にいる主の言葉がにわかに信じられなかった。

姉?

十六夜咲夜が紅魔館でメイドの仕事を始めてからお嬢様の家族は妹様だけなのかと信じていた。
だが事実は違った。実際には三姉妹だったのだ。
だがお嬢様はその存在をまるでいなかったかのように扱っている。
元々私たちは二人姉妹だというかのように。

おずおずと彼女に尋ねる。

「あのっ……お嬢様にはお姉さまがいるのは本当なのですか?」

「ええ、そうよ」

「じゃあなぜ、私に教えてくれなかったのですかっ!?」

私がこだわっていたのはまさにそこである。
お嬢様に姉がいた、という事実はこの際どうでもいい。
だがその事実を私に教えてくれなかった、いや隠していたというのが正しいだろうか。

そんなに私は信用されていないのか?
それとも、私にも話せないような事情があったのか?

私は流れ出ようとする涙を必死に堪えながら、彼女に尋ねた。

「そんなに私のことを信用できませんかっ!? それとも何か話せないほどの事情があったのですかっ!?
 教えてください、お願いしますッ!」

主人に対する私の初めての我侭(わがまま)だった。
その様子にだんまりを決め込んでいたレミリアが、渋々答える。

「別に貴女に隠していたわけじゃない……と言ったら嘘になるわね」

「えっ? どういう……ことですか?」

「イリスがさっきも言ったとおり、私の実の姉よ。優しくて、頼りがいがあって、強くて、美しくて……。私が尊敬する姉だわ」

そう言い、お嬢様はゆっくりと自分とイリスの過去について語り始めた。

スカーレット家に生まれたイリスとお嬢様は次期当主に選ばれるほどの実力を兼ね備えた器だった。
だが「羽なし」として生まれた妹様に二人は多大な愛情を注ぎ込んでいた。
二人とも、自分たちと血を分けた妹だったから。

だがそんな些細な幸せはそう長くは続かなかった。
彼女の両親が気付いてしまったのだ、その事実を。
両親は妹様を拷問のすえ嬲り殺そうとした。
妹様の命の危機を救ったのは、イリスであった。
イリスはそのまま両親を殺害し、紅魔館の当主を名乗った。
そして妹様に羽を移植し、もう二度と「羽なし」と呼ばれることがないようにした。

だが妹様はどこに行っても、その汚名は消えなかった。
イリスはそんな世界に絶望し、壊すことを決意する。
その彼女を止めたのが、あの八雲紫だという。
紫がイリスを力で捻じ伏せ、彼女の狂気を止めたのだという。
そうして彼女は紅魔館の地下深くの牢獄に封印され、今に至るというわけだ。

確かにそういう過去があるのなら、私に話せなくても仕方ないのは分かる。
だがひとつだけ疑問が残る。

「何故、封印されていたイリス様が、復活なされたのですか?」

そう、そこが問題だった。
封印されていたということは、誰かがそれを解いたということなのである。

では、誰が。何のために。

「そうね、そこまでは私の運命力は分からなかったわ。何者かに妨害されているようで」

お嬢様が顔をしかめる。

「妨害? お嬢様の運命力をですか?」

それは普通は不可能だ。
他人にどうかされて妨害できる代物ではないのだ。
だが仮にも、そういうことができる輩(やから)がいるとしたら?
そう仮定すると、今までパズルのピースのようにバラバラになっていた情報がひとつにまとまっていった。

「ということは、お嬢様の運命力を妨害した者がイリス様の復活を望んだ、そういうことになりますよね?」

「その通りよ」

お嬢様は、テーブルの上に置かれているコーヒーカップに手をかけ、ゆっくりと啜った。
その紅茶の風味を確かめるかのように。

「分かりました。そういうことなら仕方ないです。私もお供します」

「いいの? 私といたら貴女も死ぬわよ?」

お嬢様が私の顔を窺う。
私は真剣な眼差しでお嬢様を見つめる。

「そう、貴女も結構頑固だしね。止めてもしょうがないか」

精一杯の笑顔を私に向けてくれる。
その笑顔が、何故か無性に悲しかった。











イリスは炎弾を弾き落としながら、接近してくる。
彼女は炎弾を弾き落とす際、一瞬だけ炎弾に気を取られる。
それが今の彼女の唯一の隙だった。

再び炎弾が彼女の頭部目掛けて放たれる。
彼女は炎弾をその手で払い落とそうとする。

――今だッ!

銀のナイフを持てるだけ持って、彼女に突進する。
彼女は驚いた顔でこちらを見ている。
その僅かな油断を狩らせてもらう!

「ハッ!」

ナイフを彼女の頭部、左肘、右肘、左足、右足、心臓へと切り込ませる。
大半のナイフは彼女に叩き落されたが、左足と右肝のナイフには目が届かなかったようだ。

彼女の顔は苦痛に歪む。

――どうやら銀のナイフが効いているようだ。

私はそう判断し、次なる手を使う。

――幻符

「――殺人ドール――」

ナイフが自ら意思を持つかのように、私の周囲に展開される。
そう、これは舞い。踊りである。
舞いは敵の心を揺さぶり隙を作るのに使われる。
だが私は、舞うことでナイフの命中精度を上げているのだ。

そして指を軽く鳴らす。

甲高い音が響き渡り、数百のナイフが一斉に襲い掛かる。

彼女の頭部、瞳、口、耳、首、胸、腹、左肘、左手、右肘、右手、右足、左足。
彼女の身体と名のつく場所全てにそのナイフが突き刺さろうとした。

彼女は微かに笑みを浮かべると、左手を横に差し出した。
そこから出てきたのは燃え盛る剣だった。
蒼く燃え盛る剣、私はそれを何度も見たことがある。

――そうだ、妹様とのお遊戯(あそび)で。

私はそれを何度も目にしたはずだ。
だが、思い出せない。
名前を思い出せない。いや違う。思い出すことを拒絶しているのか?

彼女は再び微かに笑うと、その剣の名を叫んだ。

――禁忌

「――レーヴァテイン――」

剣を手に掴んだ。
蒼く燃え盛る剣を。
全てを原子レベルにまで破壊する災いの杖を。

彼女のその一振りで、全てが燃えた。
いや、燃えたというよりは、溶けたという表現のほうが正しいのだろうか。
跡形も無く蒸発してしまったのだ。銀のナイフが一本残さず。

じりっと一歩後ずさる。

倒すどころか、これでは時間稼ぎにもならない。
それだけ、彼女――イリス・スカーレット――の力は圧倒的であった。
流石はあの二人の姉をやっているだけはある。
私は畏怖(いふ)にも似た感情を味わっていた。

そんな中、パチュリー様が私の前に出る。
私は、目の前にいる紫色がパチュリー様だということが、数秒の間認識することができなかった。

「パ……パチュリー、様、何をっ!?」

彼女の行動が予想できない。
彼女には何か策があるのか。
それとも……。

「咲夜、下がりなさい」

パチュリー様が冷たく言い放つ。

「ここは、危険よ。だから、早くっ!」

「だ、駄目です。パチュリー様! 早く下がってくださいっ!」

恐怖を胸の内に押し込めつつ、彼女に叫ぶ。
だが彼女は私の言葉に耳を貸さない。
彼女は凛とした表情のまま、私に叫ぶ。

「いいから、この技は危険だから。貴女を巻き込みたくないの」

彼女の言葉に、牙がなくなる。
優しさと温かさが篭った言葉だった
不意に自分の瞳から涙が零れそうになるのを堪える。
そして眼前の少女の顔を脳内に焼き付けて、後退する。

「分かりました。では――」









「運動後の紅茶は何に致しましょうか?」

彼女の言葉に、自然と吹き出してしまった。

「くすっ、そうね。では、ダージリンでお願いね」

「かしこまりました。運動後ですから、爽やかな香りのするファーストフラッシュ――春摘み――されたので宜しいでしょうか?」

「そうね……それでお願いね」

「分かりました。では」

一瞬彼女が切なげな瞳でこちらを見つめる。
だがすぐに元の引き締まった表情に戻り、走り去っていった。

「お話は終わったのかしら?」

目の前にいる客人が話しかけてくる。
その薄く桃色のかかった唇から吐息が漏れる。

「ええ、そうね。終わったわ。もう何も思い残すことがないわ」

その燃え盛る炎のように紅い瞳を見つめ、そう呟く。

「本当に?」

彼女がそう呟く。手には邪悪に燃え盛る剣を持って。

「本当、と言ったら嘘になるわね」

ひとつ溜息を吐いてそう呟く。

「そういえば、貴女。随分と正気を保っていられるのね。昔みたいに狂気で周りが何も見えないのかと思っていたけれど」

「ふふっ、今でも結構冷静でいられないのよ。憎悪、悲愴、憤怒、そして狂気が私の胸の中で混ざり合っているの」

「そう、まぁそうよね。で、またフランのこと?」

「そうね。また……かな。やっぱり自分の中の猛獣を抑えるのは無理みたい、私」

彼女がくすくすと微笑む。
それに釣られて私も笑う。

「さて、と。パチェとはまだ色々と話したいことがあるけど、ごめんなさい。そろそろ限界だから」

「でしょうね、いいわ。私が貴女を止めてみせる」

「できるものならっ!」

まず動いたのはイリス。
私の死角から攻めこみ、レーヴァテインを振り下ろす。

「無駄ッ!」

腕に防御用の魔方陣を展開させ、彼女の刃を弾き返す。

もしこの刃がフランが放ったものなら、私は防ぐことができなかっただろう。
だが、相手はイリス。能力はスペカのコピー。故に防げる。

「ハッ!」

レーヴァテインがその速度のまま、下段から上段へと振り上げられる。
もう一方の手でそれを防ぎ、バックステップをして距離を離す。

「次は、此方から行かせてもらうわね」

素早くスペルカードを発動させる。
この距離なら、直撃させられる!

――金符

「――シルバードラゴン――」


白銀色の龍の姿を模った弾幕の嵐が彼女を襲う。

――この弾幕、いくら彼女でも流石に無事では済まないでしょうね。

勝利を確信し、追撃するためにスペルカードを構える。
そして、彼女に照準を合わせ、宣言する。

「これで終わりよ。イリス・スカーレットッ!」

――月符

「――サイレントセレナ――」

黄金色の月を模った弾幕の嵐が彼女を襲う。
爆風が辺りを激しく包み込む。
彼女の居たと思われる場所には、すでに瓦礫の山と化していた。

私は確信した。
いくらあの子(イリス)でも、私の本気の弾幕を耐えられるはずがない、と。
故に彼女は、良くて瀕死。悪くて即死。

だから、目の前にいるソレが何事もなかったかのように姿を現したとき、私は目を疑った。

片腕で立ち込める煙を払いのけ、ゆっくりと歩み寄るソレを。
まるで自分が戦場(ここ)の主であるかのように振舞うソレを。

銀色に光る怪物(それ)を見たとき、私は後悔した。

――レミィたちにお別れを告げずに去ってしまうわね。

だから私は懺悔しよう。彼女たちのために。
そして私は覚悟した。今目の前にいる死神に、この命の灯火を奪われる恐怖を。

――混符

「――クライシストルネード――」

「無駄よ。どんな弾幕も無駄。私にはただの風に過ぎないわ」

死神が私の目の前に歩み寄る。
あと一歩近づけば、お互いの顔がぶつかってしまいそうな距離。
彼女は片手に持つレーヴァテイン(それ)を、ゆっくりと構える。

「パチェ……。安心して」

「すぐに貴女の大好きな人も送ってあげるから」

胸に異物が突き刺さるような違和感を感じる。
それが何かと認識するのにそんなに時間が掛からなかった。

胸に突き刺さった蒼炎の剣は、ゆっくりと私の身体を蝕んでいく。
胃が逆流する。口の中に血が溜まっている。
だが私はその痛みに抗わない。
決して諦めているわけではない。
死が訪れるのを待っているわけでもない。

彼女の身体が私の身体と離れられないこの瞬間を待っていたのだ!

「ふふ、ふ……。イリス、貴女、勘違いしてるわよ?」

血を吐き出しながら、彼女に言う。

「私が何を勘違いしてたっていうのよ、死にぞこないの魔女」

「そう、ね。私は、魔女、よ。……だから、タダでは死なない、わよ」

その瞬間、彼女の顔を真っ青になった。

――零距離で弾幕を喰らえば、彼女も無傷では済まないはず。

だから私は、最後の悪あがきするのだ。
親友である彼女――レミリア・スカーレット――のために。

――火水木金土符

「――賢者の石――」


            To be continued...


次回→AD狂乱する少女編 第5話『姉妹』

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